ネット党首討論から感じたこと

11月29日、六本木にあるニコファーレにて、党首討論が行われた。
党首討論といえばテレビでやるのが基本的だが、今回はドワンゴが各党に呼びかけをし、実現した。

参加したのは計10政党(衆院解散時の議席数順)。

  • 民主党代表の野田佳彦首相
  • 自民党の安倍晋三総裁
  • 日本未来の党の嘉田由紀子代表
  • 公明党の山口那津男代表
  • 日本共産党の志位和夫委員長
  • みんなの党の渡辺善美代表
  • 社民党の福島みずほ党首
  • 国民新党の自見庄三郎代表
  • 新党大地の鈴木宗男代表
  • 新党日本の田中康夫代表

アクセス数は100万人を越え、一時アクセス困難になるほど注目を浴びることとなった。

ネットで党首討論をやる意味

今回の取り組みを知ったときはとても面白い取り組みだと感じた。
ネットで中継するということは、編集のきかない”一発本番”であるので、党首のリアルな言葉を聞くことができる。
また、ニコニコ動画での放送ということで、視聴者自身が感じたことを直接コメントでき、参加型のスタイルになる。
従来であれば、党首同士が討論をするのをただ見ていることしかできなかったが、自分の意見を直接ぶつけることができる。
匿名性ということもあり、”荒れる”心配もあるが、それは許容範囲であろう。

期待はずれだった

だが、私が期待したような”面白い”取り組みではなかった。
コメントが表示されない時間帯もあったようだし、コメントが拾われて会場に反映されることは一切なかった。
党首討論なので、必要ないと言えばそうなのかもしれないが、国民と直接関われるいい機会であったので、うまく利用して欲しかったというのが本音だ。
第一、政党が多すぎて、討論には至らなかった。

さて、内容について言及する。
議論のテーマは「TPP」、「消費増税」、「原発」の3つに絞られた。
各党が賛成、反対、その他で分けられ、それぞれの意見を主張した。
率直に感じたこととしては、「どこも似通っているな」。
選挙がすぐあるということで、国民に分かりやすいようにキャッチーな政策を打ち出している政党が多く見受けられたせいもあってか、言い方を変えているだけで結局は結論は同じではないのかというのが正直な印象。

その中でも最大の争点となっている「原発」と例に出して言うと、原発推進派、脱原発、卒原発などいろいろな言葉が飛び交っているが、結局はどこも「脱原発」を”目標”にやっているのではないだろうか。
福島での事故を目の当たりにして、「事故が起きてもいいから、原発やろう!」なんて言ったら国民からの支持は得られないのは目に見えている。
国民の票を集めるため、自分たちが政権を担うためには「脱原発」を掲げるしかないと思う。
そういった議論の中でも、”すぐに”脱原発をするか、”長期的に見て”脱原発をするのか、という違いではないだろうか。
そこが各党の政策の違いになっているが、はっきり言って大きな差ではない。
結局は最終目標は「脱原発」なわけだし、その方法をどうするか、なんて議論してもはっきり言って時間の無駄だ。
議論をして、自然再生可能エネルギーが生まれるわけでもない。

原発についての個人的な意見

原発について個人的な意見を述べさせていただく。
311以降稼働している原子力発電所は数える程度だ。
だから、このまま脱原発できる、と安直に考える人がいるが、そうは簡単にいかないと思う。
原発が稼働していたころには稼働していなかった火力発電を”無理矢理”稼働させている現状がある。
ガタがきたら修理をして…ということを繰り返してなんとか保っている。
が、シムシティ的に言えば、いつ爆発してもおかしくない状態だろう。
そんな状態ではどうしようもないし、電力会社も赤字が増える一方である。
結局ツケが回ってくるのは国民で、電気代があがることに繋がる。
そういう背景があることを知ってか知らずか、電気代はあげるな、でも脱原発はしろ、とはあまりにも都合がよすぎるのではないか。

結局は人気投票になってしまう

話を戻す。
テレビなどでは、各項目(TPP、消費増税、原発など)について、「この党は反対だ、賛成だ」と図で示しているところをよく見かける。
果たして、意味があるのか?と疑問に思ってしまう。
というか、既存の政党を離党して、新党を結成して、結局は言っていることが同じということはよくあることだ。
まあそれはいいとして、どの党もあまり変わりのないことを言っている中で、国民はどうやって選ぶのだろうか。
結局は、人気投票だ。
話が上手い人には引き込まれる。
しかし、どれだけ立派な政策を掲げていても話下手な人には不信感を持ってしまう。
でもそれでいいと思う。
人が話すことは変わるし、正解はない。

国民に求められていること

じゃあ、国民にはどんなことが求められているのか。
それは、監査役、チェックマンとしての役割だ。
「あの時はこんなことを言っていたのに、なぜ覆すのか」
こう言った意見が言えないのが現状だ。
正しくは、言っていたとしても伝わらない。
私が今回期待したことはそういうことだ。
ネットを通じれば、リアルタイムで意見を述べることができる。
そういった”声”を伝えていくことはとても大事だ。
誰しも監査役がいなければ妥協をしてしまうもの。
身近にそういったツールができたことはとても良いことだし、これを使わない理由はない。
国民と政治家がもっと密にコミュニケーションを取ることが大事だろう。

そういった意味でも今回の討論会は残念だ。
ネットの良さが1つも引き出せていなかった。
これならテレビでやっているのと同じ。
一方通行のコミュニケーションは成立しないのだから。

会場には多くの取材陣が来ていた。
ネットでの取り組みが活発になってきている昨今なので、メディアの方々も注目されていたのだろう。
“新しい”メディアであるネットでの出来事を、”古い”メディアであるテレビ、新聞が取り上げている光景を見て、時代の移り変わりを見ているようだった。